瞑想と脳科学【概要編】

2019年5月31日

瞑想とは何か

瞑想(meditation)というと宗教が絡んでくることもありとても胡散臭いという印象を持っている人も多いと思います。しかし、ここ10-20年ほどで瞑想の研究は本格化し、認知機能や脳にいい効果があるということを示す知見が驚くほど蓄積されてきています。

実際、瞑想は5000年以上もの歴史を持ち、世界各地で別々に発展を遂げてきました。瞑想なんてどう考えても面倒臭くて大変なものが、もしも効果がないんだとしたら5000年も受け継がれることはないと思いませんか?まして、スティーブ・ジョブズやGoogleが瞑想を取り入れていたというのは有名な話です。彼らほどの一流のビジネスマンが無駄なことをやり続けるはずがありません。

このページでは認知神経科学研究における瞑想の概要と、瞑想が私たちに与える効果についてなるべくわかりやすくまとめていきます。

瞑想の分類

瞑想は宗教などによって様々ありますが、大きく2種類に分けられます。

1つ目はフォーカス・アテンション瞑想(Focus attention meditation, FA)

2つ目はオープン・モニタリング瞑想(Open monitoring meditation, OM)

です。

フォーカス・アテンション瞑想

日本語に訳すと「注意を集中する瞑想」となります。

簡単に言えば、呼吸に意識を向け続けるとか、ある感情に意識を向け続けるとか、何かのマントラを唱え続けるなど、特定の対象に意識(注意)を向け続けるタイプの瞑想のことです。

ポイントは「集中」です。

オープン・モニタリング瞑想

日本語に訳すのは難しいですが「開かれた監視的な瞑想」という感じでしょうか。

内容としては、フォーカス・アテンション瞑想と異なり、自分の心に浮かんだことを「観察」し続けるタイプの瞑想です。マインドフルネス瞑想と言われるのはこのタイプです。

こちらのポイントは「観察」「気づき」などになると思います。

例えば、仏教におけるヴィパッサナー瞑想では、未来のことや過去のことを忘れ、いま心に浮かんだことを「観察」していきます。

瞑想の効果

2種類の瞑想では行うことが違うので、使われる脳部位も異なります。その結果、得られる効果も若干異なってくると予想されるのですが、大まかにはどちらも似たような効果が得られるようです。その効果についてまとめていきます。

1:集中力の持続力が向上する

どちらの瞑想においても、長時間(数十分から数時間)にわたり集中力を持続させる必要があります。その結果、集中力を持続させる力が身についていきます。

例えばValentine and Sweet(1999)の研究では、フォーカス・アテンション瞑想の実践者、オープン・モニタリング瞑想の実践者、未経験者の3グループに、集中の持続を計測するテスト(Wilkins’ counting test)を行ってもらいました。その結果、瞑想の実践者はそうでないグループよりもテストのスコアが高く、また瞑想を2年以上おこなっている人たちはそれ以下の人たちよりもスコアが高いことがわかりました。

他にも瞑想が集中力の持続力を高めるという研究結果は数多くあり、瞑想が集中力を高めるというのは間違いなさそうです。

2:ワーキングメモリが向上する

ワーキングメモリはいわば「地頭の良さ」のようなもので、知能指数(IQ)や学業成績などと相関することがわかっています。詳しくは以下の記事を参照。

地頭がいいってどういうことか?脳科学的な解説 – 脳科学の情報まとめ|LEEMS

Zeidanらによる2010年の研究では、63名の大学生を対象に短期間の瞑想トレーニングがもたらす影響を検証しました。この研究では20分間のマインドフルネス瞑想を4日間おこなってもらい、その前後でワーキングメモリの計測(2-back課題)を行いました。その結果、瞑想を行ったグループでのみワーキングメモリ成績の向上が見られました。

先ほど書いたようにワーキングメモリはIQや学業成績と関連し、またADHDのような精神疾患はワーキングメモリの障害であると考えられています。この重要性から鑑みると、瞑想がワーキングメモリを向上するというのは驚くべき結果だと思います。

3:実行機能が向上する

実行機能というのは説明するのが難しい概念なのですが、ざっくり言えば「自動的な反応の抑制」がその重要な役割であると思います。どういうことかというと、何かに集中している時に、何か物音がしたとします。そうすると、実行機能が低い人はその物音に「自動的に反応」してしまい気が散ってしまいます。実行機能が高い人はそのような反応を抑制することができます。

この実行機能は、もっとマクロな意味で目標を達成したりすることに重要な能力であると考えられています。要するに、人間が人間であるために必要な認知機能だと言えます。この実行機能も、瞑想によって向上することが示唆されています。

Chanらによる2007年の研究では、50名の瞑想実践者と10名の一般人に対して、実行機能の測定によく用いられるストループ課題というテストを行ってもらいました。その結果、瞑想実践者の方が実行機能が高いという結果が得られました(p<0.03)。また、1日に瞑想を行う時間が長いほど実行機能が高いことがわかりました(p<0.005)。

また、オープン・モニタリング瞑想でもフォーカス・アテンション瞑想でも類似の結果が得られています。

瞑想が脳に与える影響

瞑想が認知機能に好影響を与えることはかなり多くの研究で裏付けられています。それでは、これらの効果は脳のどのような変化に基づくのでしょうか。MRI等を用いた研究で、瞑想は脳に変化を与えることがわかってきています。ここでは、「脳活動」と「脳構造」に分けて概観していきます。

瞑想が脳活動に与える影響

まず、瞑想中には脳はどのような活動を見せているのでしょうか。

研究によって様々な脳領域の活性化が報告されていますが、多くの研究に共通して見られる領域は、「前頭前皮質(PFC)」と「前帯状皮質(ACC)」があります。

例えばNewbergらによる2001年の研究では、SPECTと呼ばれる方法を用いて、チベットの仏教徒が1時間瞑想している間の脳血流を計測しました。その結果、ACCやDLPFCと呼ばれる、いわば集中力を司る脳領域の血流量が増加していることがわかりました。

これらの領域はどんな役割があるのかというと一概には言えませんが、PFCはワーキングメモリや集中力の持続、ACCは実行機能の実現に重要であると考えられています。

よくわからないと思いますが、人が人であるために重要な領域が、瞑想の最中に活性化するというイメージでしょうか。この領域が活性化することによって集中力が鍛えられている、とも言えると思います。

瞑想が脳構造に与える影響

瞑想によって、PFCやACCといった重要な脳領域が活動することがわかりましたが、瞑想を長期間続けるとどうなるのでしょうか。結論から言えば、これらの領域の密度が上がったり、容量が増加する(維持される?)ことが報告されています。

また、瞑想は短期間であっても脳構造を変化させます。Holzelらによる2011年の研究がそれで、8週間のMBSRと呼ばれる瞑想トレーニングを行なった場合、そうでない人たちと比べて海馬体や後帯状皮質、小脳といった部位の灰白質密度(要するに神経細胞の密度)が高かったことがわかりました。

たったの2ヶ月でさえも瞑想は脳の構造を変化させるんですね。

このMBSRトレーニングは精神疾患の症状改善、幸福度の向上に効果があることが示されており、このような効果は脳構造の変化に基づくと考えられます。

まとめ

ざっくり、瞑想にはどのような種類があり、どのような効果があるのかということをまとめてきました。見てきたように、様々な研究で瞑想は私たちの頭をよくし、実行機能(いわば意志力)を高めることが示されています。また、それらの効果は脳科学の研究でも裏付けられています。

これだけ明確に「効果がある」と認められる行動はなかなかないんですよね。運動ぐらい。こんなにすごい(かつシンプル)なことで脳を鍛えられるのであればやらない手はありません。僕も毎日15分ぐらいですが瞑想をしています。数日やるだけでも集中力が向上することを実感できますので、是非皆さんもやって見てください。

最後に、じゃどうやればいいのって人に、ものすごく簡単に説明します。

瞑想の簡単なやり方

といっても本当に簡単で、難しく考える必要はありません。

タイマーで15分ほど(最初は5分でもいいかも)測っておきます。

で、目をつぶってひたすら呼吸に意識を向ける。

そうすると、ふと自分が余計なこと(明日何しようか、足かゆいな・・・など)を考えていることに気づきます。

気づいたら、また呼吸に意識を戻す。

ひたすらこれを繰り返すだけです。

「気づいて意識を戻す」瞬間に脳は鍛えられると思うので、意識がしょっちゅう飛んでても気にすることはありません。それだけ成長を実感できますよ。

1. Valentine, ER & Sweet PLG. Meditation and attention: A comparison of the effects of concentrative and mindfulness meditation on sustained attention. Ment. Heal. Relig. Cult. 2, 59–70 (1999).

2. Zeidan, F., Johnson, S. K., Diamond, B. J., David, Z. & Goolkasian, P. Mindfulness meditation improves cognition : Evidence of brief mental training q. Conscious. Cogn. 19, 597–605 (2010).

3. Chan, D., Ph, D., Woollacott, M. & Ph, D. Effects of Level of Meditation Experience on Attentional Focus : Is the Efficiency of Executive or Orientation. J. Altern. Complement. Med. 13, 651–657 (2007).

4. Newberg, A., Alavi, A., Baime, M., Pourdehnad, M. & Santanna, J. The measurement of regional cerebral blood flow during the complex cognitive task of meditation : a preliminary SPECT study. Psychiatry Res. Neuroimaging 106, 113–122 (2001).

5. Hölzel, B. K. et al. Psychiatry Research : Neuroimaging Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Res. Neuroimaging 191, 36–43 (2011).