【脳波】α波って結局何か:脳科学研究まとめ

2019年5月31日

参考にした論文はこちら↓
Bazanova, O. M. & Vernon, D. Interpreting EEG alpha activity. Neurosci. Biobehav. Rev. 44, 94–110 (2014).

α波って何?

ネット上の脳波情報はほぼあてにならない

α波の出し方だとかα波が出る音楽だとか、ネットには色々な情報が転がっています。

が、はっきりいってそれらの情報のほとんどはオカルトの域を出ません。

脳波はその中二病臭いネーミングも手伝ってか、特にスピリチュアルな話と結びつけられることが多いようです。

間違った情報に騙されないためには、それなりに正確に研究の現状について知っておく必要があります。

また、今後数年〜数十年で脳波計が日常にも普及してくる可能性があります。

その時に一体どんなことに利用できるかということを考えるにあたり、脳波研究の現実的な成果を知っておくことは役に立つでしょう。

そもそも脳波とは何か?

そもそも脳波ってなんなのかよく分かっていない人がほとんどでしょう。

実は脳波のメカニズムそのものは現在それほど分かっている訳ではありません。が、ざっくりいうと以下のような説明になります。

結論から言うと、大量の神経細胞集団が、リズミックに電位変化する現象のことを脳波と言います。

もう少し詳しく説明しましょう。

脳波計に計測されるのは大量の神経細胞の活動だけ

脳の表面には神経細胞が大量に集まっています。

そのそれぞれが電気を使って活動しているのです。

この神経細胞たちは、バラバラに好き勝手に電気活動することもあれば、周りの神経細胞たちとリズムを合わせて同時に電気活動することもあります。

脳波計に計測されるのはこのうちどちらでしょうか。

実は、脳波計ではバラバラな神経細胞の電気活動を計測することはできません。

脳波計というのはみなさんが思っているよりも精度が低い計測機器なのです。

というのも、神経細胞と脳波計の間には頭蓋骨や皮膚などがあるからです。これらに阻まれて、小さな電気活動は計測できません。

しかし、大量の神経細胞たちが同期的に電位変化した場合は、脳波計まで電気が届きます。

つまり脳波として計測されるのは、大量の神経細胞たちが、リズムを合わせてバッバッバッバッバッと電位変化している時だけなのです。

これが脳波です。

神経細胞は色々なリズムで同期的に電位変化する

そして、そのリズムは様々です。

つまり、ババババっと早いリズムで活動することもあれば、もっと緩やかなリズムで活動することもあります。

かなり早いリズムで電位変化している場合、ガンマ波と呼ばれます。

1秒間に30-100回ぐらい(つまり30-100Hz)です。

もっとも遅いリズムで電位変化する場合、デルタ波と呼ばれます。

1秒間に1-3回程度(1-3Hz)です(最近ではより遅い脳波も研究対象となっています)。

これが4-7回(4-7Hz)程度になるとシータ波

8-13回(8-13Hz)程度になると、今回着目するアルファ波となります。

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実際に計測するとこのような波形として記録されます(図は上記論文より引用)。

(目を閉じているとα波は強く出て(図左)、目を開くとα波は減少します(右))

ネットで言われる各脳波の機能について

そして、これらは各々研究がなされており、様々な機能が存在するようです。

とはいえ実際、どの脳波を取っても、まだまだ研究途上というのが実際のところです。

よくネット上で紹介されるように、●●波は集中力だとかいうのはあまり真に受けない方がいいと思います。

ネットでよくある説明として、

デルタ波:睡眠中
シータ波:まどろみ、うたた寝
アルファ波:リラックス
ベータ波:緊張、集中

などと言われます。

が、これは単純化しすぎだと思います。

どの脳波にしても、どんな状況で、どの脳領域の話なのかとか、何歳なのかなどによって話は変わってきます。

これらの情報を書いているようなサイトは、他のサイトの(信用できない)情報の受け売りをしているだけで信用できるとは思えません。

アルファ波について(本題)

前置きがずいぶん長くなりました。

アルファ波について改めてまとめておくと、脳表面の神経細胞たちが1秒間に8-13回ぐらいのリズムで同期的に電位変化している現象のことでした。

このアルファ波について、研究ではどのようなことが分かっているのでしょうか。

アルファ波と認知機能

まず、アルファ波にはどんな機能があるのかということを簡単にまとめましょう。

アルファ波は抑制である

まずアルファ波について一番よく言われることは、「アルファ波は抑制を示す」ということです。

どういうことかというと、アルファ波が出ている脳領域は活動を低下させているということです。

これは多くの人にとって意外ではないでしょうか。

直感的に、アルファ波が出ている、ということは脳が凄く活動しているのだと思いませんか?

でも実際には逆なのです。

事実、先ほど少し書きましたが、目を開くと視覚野のα波は減少します。

今あなたは目を開いてパソコンの画面を見ていると思いますが、この時アルファ波はそれほど出ていません。

しかし、目を閉じると一気にアルファ波が出現します(Berger effectなどと言われます)。

また、運動野のアルファ波に関しても同様です。

体を動かしているときは(運動野の)アルファ波はあまり観測されません。

体の動きを止め力を抜くと、アルファ波が出現します(ERD/ERSと呼ばれます)。

また、fMRIと呼ばれる、脳波とは別の、脳活動を計測する装置を用いた研究では、視覚野のアルファ波が出現しているとき、視覚野を中心とする脳の活動が減少しているとの報告があります。

これらの実験事実から、基本的にアルファ波は脳活動の抑制であると考えられます。

アルファ波がある意義

抑制と書くとあまりいいイメージを持たれないかもしれません。

しかし、この抑制が多くの認知機能において重要な働きをします。

例えばピアノのコンサートで音に注意を向けるとき。

音に敏感に反応するためには、視覚情報を遮断する必要があります。

ここでアルファ波の抑制機能が活躍するのです。

アルファ波によって視覚情報を抑制することで、音への反応を敏感にすることが可能になるのです。

この抑制機能は以下のような認知機能に貢献します。

トップダウンの注意制御(集中力)

ワーキングメモリ

などがそれです。

要するに、アルファ波によって不要な情報を遮断することが可能になるという訳です。

また、ここでは詳しく触れませんが、アルファ波は視床ー大脳皮質間のループによって生まれるとされ、これに関連してアルファ波は記憶を取り出すといったことを実現しているという研究者もいます。

アルファ波の個人差

アルファ波は認知機能に重要であるという話をしてきました。

このアルファ波にも個人差があります。

例えばアルファ波が強い人・弱い人

8Hzのアルファ波の人、13Hzのアルファ波の人

などなどです。

そして、このアルファ波の個人差が認知機能の個人差にも関わっているようです。

アルファ波が出ない人は認知機能が低い傾向

人口の3-13%の人はアルファ波がほとんど出現しないようです(Low-Voltage EEGの略でLVEEGと呼ばれているらしい、初耳)。

そして、これらのアルファ波がほとんど出ないLVEEGの人は注意力が低下していると言ったことが報告されています。

先ほど書いた、アルファ波が認知機能に重要であることと重なりますね。

アルファ波の周波数帯域は高い方が認知機能が高い傾向

アルファ波は8-13Hzの脳波だと言いました。

つまり、人によっては8Hzのゆっくりしたアルファ波かもしれないし、人によっては13Hzの速いアルファ波かもしれない。

遅いアルファ波と速いアルファ波とがあるのです。

そして、この二人では13Hzの速いアルファ波の人の方が認知機能が高い傾向があるようです。

具体的にはワーキングメモリ機能が高いこと、IQが高いこと、記憶力が高いことなどと関連づけられます。

遺伝とも関係するようです。

ちなみに僕は普段9Hzぐらいなので遅い方です。残念。

ただ、もちろんこれだけで認知機能が決まるわけではありません。

また、これは個人差だけでなく個人内差もあります。

加齢に応じて遅いアルファ波になる傾向があったりします。

アルファ波まとめ

以上をまとめると、アルファ波とは、1秒間に8-13回のリズムで、神経細胞たちが同期発火している現象。

これは不要な情報を遮断するなどして認知機能に貢献している。

またアルファ波には個人差があり、速い方が認知機能が高い傾向がある。

と言ったところでしょうか。

ところで、もし将来ポータブルな脳波計をあなたが手に入れた場合、どんな可能性があるでしょうか。

脳波の未来

脳波計は近年小型化・ワイヤレス化が進み、日常生活への浸透が期待できるようになってきました。

現状ではまだまだ精度や価格の点で問題がありますが、これも時間の問題でしょう。

小型で高機能な脳波計を手にすることができたらどんな可能性があるでしょうか。

体温計・心拍計のように脳波計を使うことでコンディションを管理する

まず、脳波計を使うことでその時のコンディションを推測することができるようになるかもしれません。

脳波を見ると今日はいいコンディションで勉強できてるな、とか、今日は調子が悪いみたいだなというように、自分のコンディションを脳レベルで知ることができるでしょう。

それによって、今日は調子が悪いから作業を切り上げて運動や瞑想をしよう、などと言った使い方ができそうです。

体温計では体温を測って自分の体調を可視化することができます。

それと同じように脳状態を可視化することで、新しい働き方が見えてくるかもしれません。

心拍計では自分の心拍を見ることで、限界まで追い込んでトレーニングできます。

もしかしたら脳波計を使って同じようなことができるかもしれません。

また、精神的な疲労は脳波に現れてきます。

自分の疲労を客観的に見ることができるのは大きな可能性があります。

例えば職場や運転中、自分の疲れには意外と気づきにくいものです。

脳波を見て、あ、今自分凄く疲れてるんだ、と分かれば、遠慮なく思い切り休める。

こういう使い方もできるかもしれません。

ニューロフィードバックで脳状態をコントロールする

ニューロフィードバックという技術があります。

脳波を自分で見ることで、自分の脳波を自分の意思でコントロールすることを可能にする、夢のような技術です。

現在多くの研究がなされ、効果があったりなかったりとまだまだ研究途上ではありますが、一般に一定の効果は上げているようです。

脳波計を手にすることができれば、これを日常的に、自分で行うことができます。

これには大きな可能性があるのではないでしょうか。

特にスポーツ選手などが脳波を日常的にコントロールすることは、より良いパフォーマンスにつながる可能性が大いにあります。

ビジネスマンも同様でしょう。

まとめ

このように、脳波が日常に浸透した場合、それなりに面白そうな応用ができるかもしれません。

さらに精度の向上が進んだり、解析のアルゴリズムが発見されたりすれば、より面白い活用法も見えてくる可能性があります。

このような未来に思いを馳せるのもいいのではないでしょうか。

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