【書評】社会脳ネットワーク入門を読んで科学のブレークスルーについて考えた

 

苧坂直行・越野英哉著の社会脳ネットワーク入門という本を読んだ。

 

この本はなかなかアツイ本だった。

「社会脳ネットワーク」とタイトルにはついてるけど、中身はそれに限らず、ワーキングメモリや知能といった認知の側面もかなり詳しい。知能の個人差というものが、ネットワークの観点から見るとどう説明できるのかについても、いろいろな立場の研究が紹介されている。読まないといけない論文が増えてしまった。

 

社会脳と認知脳をネットワークの視点から捉える

大テーマとしては「ネットワークの視点で脳を捉えた研究の整理」と「社会脳と認知脳は基本的にシーソーのように相反的な関係であることの説明」となっている。

解剖学的な話にも結構踏み込んでいて、例えば認知脳(ワーキングメモリネットワーク)はDLPFC(背外側前頭前野という脳の部位)やPPC(下頭頂葉)などのネットワークが担うことなど、結構コアな話が多い。

引用も豊富で、2018年の論文、つまり最先端の研究まで盛り込まれているのも熱いところ。

著者の苧坂さんは京都大学の名誉教授で、日本でのワーキングメモリ研究の大家とも言える人だし、越野さんの名前はこの本で初めて知ったのだけど、この分野でかなり貢献しているようだ。

 

一般向けの本ではないので注意

結構詳しく書かれている反面、脳科学神経科学にあまり触れていない人向けには書かれていないと思う。

その意味でこの分野にそれなりに詳しくないと読むのはキツイだろう。

まあ、教科書のように堅い本ではないので、脳神経科学について詳しくないけどどんな研究が行われているのか知りたいって人は読んで見るといいかも。

あと、1部2部に分かれていて、1部の序盤では神経科学の研究史なんかに触れられているのだけど、このあたりが異常に読みづらかった。挫折しそうになるが、その後(特に2部)から面白くなるので読む人は注意してほしい。

 

DMNや認知ネットワークについて知りたい人にオススメ

この本は、DMN(デフォルトモードネットワーク、いわば社会脳)やワーキングメモリ研究がどこまで進んでいるのか興味がある神経科学系の学生や研究者が、この分野についての知識を総ざらいして整理するにはうってつけの本だと思う。

実際、僕自身、認知を中心に研究しているけどDMNにも繋がってきそうだと感じていたところだから、この本で先端の研究が整理できたのはかなりプラスに働きそう。

 

 ネットワークとして脳を捉える利点

興味深かった点としては、DMNや前頭-頭頂ネットワークについての知識が整理できた点はもちろんだが、ネットワークとして脳を捉えることの利点についての説明も良かった。

ネットワークについての話は数学ではグラフ理論の一大分野であるが、脳科学をネットワークとして捉えることで、グラフ理論や複雑性の研究といった、他分野の研究成果を脳科学の発展に活かすことができる。

このように、他分野の研究と脳科学神経科学の研究が収斂していくことは、研究が大幅に発展しブレークスルーが起こることにつながる。

そういう意味で、もっと数学や他分野の研究についても知っておく必要があると感じた。それで、ネットワークの視点を自分の研究に取り入れるのはもちろんだが、未知の視点を自分の研究分野に取り込むことで科学にブレークスルーを起こしたい。そういう発見、研究がNatureやScienceに載る研究なんだろう。

 

脳のことをよく知らないけど脳の本が読みたいって人にはひとまず池谷裕二さんの本がオススメ。特に「単純な脳、複雑な私」という本は、キャッチーな話からコアな話まで、分かりやすくエキサイティングに書かれているので良い。

 

 

こちらもおすすめ

 

lifehack-science.hatenablog.com

 

 

lifehack-science.hatenablog.com