なぜ勉強すると疲れるのか:脳科学研究まとめ

2019年5月29日

(追記2018.6.17)

なんで勉強すると疲れるのか。

言い換えれば、なぜ集中力は切れるのか

この疑問は誰でも持ったことがあるんじゃないでしょうか。あるいは当たり前すぎて考えたこともない人もいるかも知れません。僕はしょっちゅう思ってます。疲れさえしなければずっと勉強し続けたり、ゲームし続けたりできるのに、と。

もしもメカニズムが分かれば、勉強しても疲れない方法が見つけられるかも知れない、そう思ってGoogle検索しました。すると、、根拠の一つも載っていないような記事だらけ。なんとなく科学の表面を撫でた風の記事ばかりです。わかったようなわからないような気しかしない記事しかないんですね。どの記事を見てもにたようなありきたりのことしか書いてありません。ガムを噛むとセロトニンが出るよ、とか音楽を聴いてアルファ波を出せばいいんだとか、極めつきに、脳は疲れないと書いている記事もある。いや、脳だって疲れますよ。疲れないんだったらどうして全ての動物はわざわざ睡眠なんて高リスクな行動を取り続けていると思うんでしょう。そんな情報を信じて無理な勉強を続けると慢性疲労に陥るので気をつけてください。

熱くなりすぎましたが、とりあえず根本的に脳で何が起きているのかさっぱりわからないんですよ。わかってどうにかなるかは分からないけど、とりあえず分かってスッキリしたくないですか?

ということで、Google Scholarを利用して論文を調べました。

その結果、よくまとまってる論文を見つけたので、ざっくり内容をまとめていきます。脳科学・神経科学をよく知らない人にも分かるようにまとめるので、よければ見ていってください。

最後に、これらの研究を元に、じゃどうしたら疲労に抗えるのかというのを考えてみたいと思います。

まとめたのはこの論文:Ishii, A., Tanaka, M. & Watanabe, Y. Neural mechanisms of mental fatigue. Rev. Neurosci 25, 469–479 (2014).

概要:なぜ集中力は切れるのか?

まず最初に、まとめをざっくり述べておきましょう。その方が読み進めやすいと思うので。ところで、集中した後の疲れなどのことを、科学の世界では精神疲労と言います。この用語はこの後も使うので押さえておいてください。

疲労(精神疲労)に関して、脳に2つのシステムがあります。促進システム(fascilitation system)抑制システム(inhibition system)です。これはなんでしょうか? 各々の役割をざっくりまとめましょう。

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促進システム:いわば「頑張る」ためのシステム

抑制システム:いわば「疲れを感じる」ためのシステム

と言えます。

つまり、促進システムが働き続ければ、いくらでも頑張れるかも知れません。抑制システムが働かなければ、精神疲労を感じないかも知れません。

でも実際にはそのようなことは起こらず、促進システムが働き続けると機能不全に陥り、慢性疲労などの重篤な症状を引き起こします。そうすると数ヶ月にわたり疲れが取れないという状況になります。抑制システムはヒトにとって必要な「休息」を促すためのシステムです。これが正常に働かなければ、脳に障害を引き起こすことになるでしょう。

ここで、精神疲労が起こるメカニズムをまとめましょう。3つのメカニズムがあります。

1:促進システムの機能不全によるもの

2:抑制システムの不具合によるもの

3:その両方によるもの

です。ここまでを概要として、ここからもう少しだけ詳しくみていきましょう。

促進システムについて

促進システムはいわば「頑張る」ためのシステムだと書きました。これを担う脳領域はどこでしょうか?ざっくり言えば、前頭(Frontal Cortex)ー視床(Thalamus)ループです。と言ってもよく分からないでしょう。とりあえずいくつかの脳領域が共同して「頑張る」ことを可能にしていると思ってもらえればいいでしょう。これが促進システムです。促進システムが働くと僕たちは頑張れます

ただし、「頑張る」というだけあって、無限に頑張り続けることはできません。この促進システムが働き続けるとどうなるでしょうか。

そうです。促進システムが働きすぎると精神疲労が起こるのです。つまり集中力が切れる。この機能不全の原因は、エネルギー代謝の低下や酸化ストレスによるのではないかと考えられています。つまりこれを対策できれば集中力が切れにくくなるだろうと考えられますね。これについては後述します。

そして、促進システムを限度を超えて働かせると、慢性疲労に陥ります。慢性疲労は字面は大したことなさそうですがそんなことはありません。慢性疲労とは6ヶ月以上にもわたり疲れが取れないという状態のことを指します。6ヶ月以上なんで、甘くみられませんよね。

抑制システムについて

抑制システムを担う脳領域はPCC(後帯状皮質)やIC(島皮質)です。これらの脳領域は、「疲れを感じる」ことと関係していて、それにより休息をとることを促します。

これは少し厄介で、実際には疲れるほど頭を使っていなくても、抑制システムさえ活動していれば「疲れた」と感じることになります

では、どのような状況で抑制システムは働くのでしょうか。それがわかれば、適切に抑制システムをコントロールして、集中力を維持できるかも知れません。

抑制システムが働く状況を箇条書きにしましょう。

1:長引くタスク(簡単なものでも)

2:条件反射(古典的条件付けと言います)や中枢感作(疲れなどに敏感になる現象)

というところです。ざっくり。

つまり、単純作業を延々と続けていると疲れてきますよね。これは抑制システムが働くから。

また勉強が嫌いな人は、条件反射的に、勉強を始めた瞬間に疲れるかも知れません。これも抑制システムの仕業だと思われます。

中枢感作は脳が疲れや痛みに敏感になることを指します。中枢感作はセロトニン受容体が関与しているらしい。後述。

だったら、そういう時は無理に勉強しても大丈夫だ、と思うかも知れません。疲れていると思ってるだけで、脳を使っていないようですからね。でも実はそんなことはないようです。抑制システムが過剰に働き続けると慢性疲労につながります。つまり、実際には頭を使わなくても、疲れを感じた時点でもうアウトってことみたいです。不思議ですね。

ではよりミクロな、分子的なメカニズムはどうなのかというと、セロトニンが関わっているようです(細かく言えば、5-HT 1A受容体が関与しているらしい)。この5-HT 1A受容体の活動低下が抑制システムを過剰に働かせると。この辺りのメカニズムはまだあまりよく分かっていないようです。

ここまでのことを図にまとめておきましょう。

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一旦まとめ:集中力が切れるメカニズムを科学的にまとめると

促進システムと抑制システムの2つのシステムが出てきました。これらの活動の状態によって、精神疲労が引き起こされるということですね。これをDual regulation systemとこの論文では呼んでいます。直訳すれば「2つの制御システム」。そのままですね。

この内容は、促進システムが強く働けば頑張れる。でも頑張りすぎると疲れる。

抑制システムは疲れたと思うだけで働く。そして精神疲労を引き起こす。

といったところです。

ではきになるのは、どうすればもっと長く集中して勉強できるのか、どうすれば疲労や集中力を回復できるのかということですね。

疲労や集中力を回復する方法とは

これらのことを踏まえて、どうすれば回復できるのか、もっと長く集中できるのかを考えてみましょう。

まずは促進システムの視点から

促進システムが機能不全を起こすメカニズム、それは「エネルギー代謝の低下」や「酸化ストレス」でした。エネルギー代謝の低下についてはあまり深く言及がなかったので酸化ストレスについて。

こちらは酸化ストレスを防ぐものを摂取することで疲労を軽減できたという報告があります。実際我々は何を摂取すればいいのでしょうか。ここから先は別の書籍(すべての疲労は脳が原因 3 <仕事編> (集英社新書))からの引用となりますが、鶏の胸肉に含まれる「イミダゾールジペプチド」が非常に有効なようです。僕も毎日食べるようにしていますが、明らかに疲労度が違いますし、集中力も長続きするようです。是非お試しあれ。

(2018.6.17追記)酸化ストレスを防ぐものとして、鶏肉をあげましたが、どうもビタミンCの方が手軽で効果も高いような気がしてきました。ビタミンCのサプリメントで1日1000~2000mgぐらいとるとかなりいい感じがします。詳しくは↓の記事で。

勉強しすぎて疲れた時の回復法をまとめた

また、頑張りすぎは慢性疲労を招くのでやめておきましょう。

促進システムについてはこのぐらいでしょうか。

そして抑制システムの視点から

抑制システムのところでは、「疲れを感じたらもうアウト」という話をしました。なるほど、好きなゲームやアニメなら疲れないけど、嫌いな勉強はすぐに疲れるというのはこれに起因するのかもしれません。根も葉もないことを言えば、「勉強を好きになる」っていうのが一番手っ取り早いんでしょうね。

あとは、「集中することに慣れる」とかですかね。僕自身、昔は集中力がなかったんですが、読書やら何やらをしているうちにだんだんと集中することが当たり前になったように感じます。そうすると確かに、かなり長い間集中することができますね。習慣化は大事です。

これに関して、「呼吸法」は集中力を上げるのにかなり効果があるようです。僕個人の経験ですが。一度でも集中力を上げてしまうことができれば、後は集中するのが当たり前になります。そうすると抑制システムが働かなくなるのでより一層集中が長続きするようになるかもしれません。実際僕はそれを実感してます。

記事はこちら:呼吸法を変えるとガチで健康で幸せな人生になるぞ:実践してみた記録

また、瞑想の凄さというのも最近の研究で分かってきてます。瞑想というと胡散臭い印象を持つ人も多いでしょうが。気が向いたら記事にまとめようと思いますが、論文の量が膨大すぎてなかなか…

セロトニンが関与するという話をしましたが、であればセロトニンの原料となるトリプトファンやビタミンB6を取ることも有効かもしれません。僕は、トリプトファンは牛乳から、ビタミンB6は肉類やサプリメントから取ってます。また、朝日を浴びることや運動も有効と言われます。特に運動は外せません。

結論:集中力を長続きさせる方法を脳科学から考えた

長くなりましたが、参考になったでしょうか。論文調査、読みを含めるとめちゃくちゃ時間かかりましたw 自分で言うのもなんですが、ブログでこれだけろくに集中力や精神疲労についてまとめてるのはこのブログぐらいでしょう。多分。もっと科学に根ざした勉強の情報がネットで分かりやすく見られるよう精進していきます。

にしても誰がこんなバカ長い記事読むんでしょうかw 読んでくれた人はありがとうございます、泣いて喜びます。

ザックリまとめると、促進システムと抑制システムのDual regulation systemが精神疲労を司っているようだという話でした。そして、鶏肉を食べまくるなど、集中力を回復するための方法も考察しました。是非、もしも読んでいただけた人は試しに、実践していただけると嬉しく思います。それでは。

2018.6.17追記というかメモ

この論文での抑制システム(PCCとIC)はDMNやSaliency Networkと対応しそう。

PCCはDMNのハブとなる領域だし、ICの前部はSaliency Networkの一部だ。集中している時にSaliency Networkが活動してDMN(いわば社会脳)が活動し始めたら当然課題への集中力は下がる。

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